火星探査の歴史
1960年代以降、オービター(火星周回衛星)、
ランダー(着陸船)、ローバー(探査車)といった
多くの探査機が火星に向けて打ち上げられてきた。
数々の失敗を重ねながらも、人類は火星の謎に挑んできたのである。
その中には、2003年に火星周回軌道への投入をやむなく断念した
日本初の火星探査機「のぞみ」も含まれる。
火星には生命がいるのだろうか?
あるいは過去に生命が存在していたのだろうか?
その謎を解明するための挑戦は限りなく続く。
マリナー4号
打ち上げ国:アメリカ
打ち上げ日:1964年11月28日
質量:260.68kg
世界で初めて火星フライバイと火星の撮影に成功。
撮影された約20枚の画像には、
数多くのクレーターが映し出されていた。
それまで火星には運河があって
火星人がいるかもしれないと思われていたが、
実際の火星は乾燥した大地で、
水も生命も確認されなかった。
マリナー9号
打ち上げ国:アメリカ
打ち上げ日:1971年5月30日
質量:558.8kg
史上初めて火星の周回軌道に入り、
約1年にわたって火星表面の約70%を撮影。
これらの画像により、
北半球は平坦な地形が多いこと、
また南半球は高地が多く、
クレーターや巨大火山があることが分かった。
太陽系最大のオリンポス山やマリネリス峡谷などを発見。
マルス3号
打ち上げ国:旧ソ連
打ち上げ日:1971年5月28日
質量:2265kg
世界で初めてランダーを
火星表面に着陸することに成功。
しかし着陸後わずか20秒後で通信断絶。
バイキング・ランダー
バイキング・オービター
打ち上げ国:アメリカ
打ち上げ日:1号 1975年8月20日、2号 1975年9月9日
ランダー 質量:572kg オービター 質量:883kg
バイキング1号のランダーはクリセ平原に、
バイキング2号のランダーはユートピア平原に着陸。
火星の土壌や大気の化学組成を分析したが、
生命体の存在は確認できなかった。
また、オービターは2年間にわたって火星を周回し、
多くの画像を撮影。
これにより火星表面の
詳しい地図の作成が可能になった。
フォボス
打ち上げ国:旧ソ連
打ち上げ日:1988年7月12日
質量:2600 kg
火星とその衛星フォボスを探査。
火星周回軌道より、
火星の上層大気から大量の酸素イオンが
流出していることを観測。
これは火星大気の進化を考える上での
貴重な発見である。
同機より5日早く打ち上げられたフォボス1号は
通信断絶で失敗した。
マーズ・グローバル・サーベイヤー
打ち上げ国:アメリカ
打ち上げ日:1996年11月7日
質量:1030.5kg
1.4mの大きさのものまで見分けることができる
高解像度カメラを搭載。
17万枚にも達する画像を撮影するほか、
レーザー高度計で地表の高低も測定。
これらにより火星の全地形地図が作成された。
過去に液体の水が流れたと思われる痕跡を多数発見。
また、過去に厚い大気があったことを
示唆する証拠もつかむ。
ソジャーナ
打ち上げ国:アメリカ
打ち上げ日:1996年12月4日
質量 ランダー:463kg ローバー:10.5kg
エアバックによって衝撃を吸収する方法で、
火星に軟着陸した最初の探査機。
ランダーと、それに搭載された
小型ローバー「ソジャーナ」で構成されていた。
テレビカメラによる撮影のほか、
土壌や岩石の化学組成、大気成分の観測を行った。
ソジャーナは、火星を自由に動き回って
探査した史上初のローバーである。
2001マーズ・オデッセイ
打ち上げ国:アメリカ
打ち上げ日:2001年4月7日
質量:376.3 kg
火星周回軌道からの観測で、
火星の北極付近の氷の下に、
大量の水が存在する可能性を示唆する証拠をつかむ。
また、別のミッションで
火星に着陸した他の探査機と
地球との通信中継の役割も果たす。
10年以上飛行し、
火星探査機の中で最長の火星滞在日数を達成した。
マーズ・エクスプレス
ESA–D.Ducros
打ち上げ国:ヨーロッパ諸国(欧州宇宙機関)
打ち上げ日:2003年6月2日
質量:666kg
ヨーロッパ諸国として初の火星探査機。
着陸船「ビーグル2」は、
オービターから切り離された後に通信断絶。
一方、オービターは現在も火星の探査を継続中で、
火星の南極の極冠付近に広がる
水の氷の存在を確認するほか、
火星に海が存在していた有力な証拠も発見。
マーズ・エクスプロレーション・ローバー
打ち上げ国:アメリカ
打ち上げ日:1号 2003年6月10日、2号 2003年7月7日
質量:185 kg
1号の「スピリット」は、
かつて湖の底であったと思われる
グセフ・クレーターに、
2号の「オポチュニティー」は
かつて広大な海の底であったと思われる
メリディアニ平原に軟着陸。
2台のローバーは火星表面の地質構造や
鉱物組成の分析を行い、水があった痕跡を多数発見。
マーズ・リコネッサンス・オービター
打ち上げ国:アメリカ
打ち上げ日:2005年8月12日
質量:1031kg
「軌道上の顕微鏡」と称される
高分解能カメラ、分光器、大気や
地下の状態を調べるレーダーなど、
さまざまな科学機器を搭載。
これまでに、液体の存在を示唆するような
地球の「泥火山」と似た地形や、
火星の生命活動の痕跡と思われる
炭酸塩鉱物を含む岩石を発見。
現在も火星の探査を継続中である。
フェニックス
打ち上げ国:アメリカ
打ち上げ日:2007年8月4日
質量:350 kg
氷が豊富にある火星の北極地域に着陸したランダー。
ロボットアームなどを使い、
5ヵ月間にわたって北極周辺の土壌を探査。
「マーズ・オデッセイ」の
上空からの探査でも確認されていた、
火星の地下に大量に存在する氷を発見。
そのほか、液体の水に含まれるようなミネラルや、
火星上空での降雪を確認した。
キュリオシティ
打ち上げ国:アメリカ
打ち上げ日:2011年11月26日
質量:900kg
過去最大の探査ローバー「キュリオシティ」を装備。
キュリオシティは6輪駆動で、
大きな岩も乗り越えられる能力を持つ。
2年以上かけて、
有機物や生命の痕跡がないかを調べるほか、
次世代の有人火星探査のための情報を収集。
2012年8月6日、
火星の赤道付近にあるゲール・クレーターに着陸。